汗の成分を知って体臭対策
汗はほぼ無臭
実は、汗そのものは、ほぼ無臭です。汗には塩分が混ざっているので、わずかに塩分のにおいがするものの、鼻をつんざくようなにおいではありません。人間であれば、誰でも汗をかきます。体臭の原因といえば「汗そのもの」という印象がありますが、そうではありません。
例えば、ジョギングでたっぷり汗をかいた直後は、強いにおいは感じられません。におい始めるのは、しばらくたってからです。
汗にあかや皮脂と混ざると、雑菌の繁殖が始まり、アンモニアに似た悪臭を放つようになります。
これが、私たちが一般的に呼ぶ「汗くさい」というにおいの正体です。
厳密には「汗そのもののにおい」ではなく「汗が、あかや皮脂と混ざったときのにおい」というほうが正しいのです。汗臭いにおいの予防は、まずこの理解から始まります。
「汗かき」という明確な定義はない
人と話をしていると「自分は汗かきなんだよね」という会話を耳にすることがあります。悩ましい顔をして、病気にでもなっているような言い方です。
しかし「汗かき」という基準は、実にあいまいです。
実は「汗を、1日に何ミリリットル以上かけば、汗かき」という明確な定義はありません。単に暑くて汗をかくのは、病気ではありません。
人には、個人差があります。人によって、声の違いや身長差など、違いがあるわけですから、汗の出る量も差があって当然です。
汗が出る汗腺の量は、個人差があります。個人差があるだけで、ただそれだけです。別に問題でもなんでもありません。
しかし、声や身長の違いは問題視しなくても、汗の出方の違いは問題視することが多いようです。
普通の人より緊張しやすいと、汗もかきやすくなるでしょう。それは病気ではありません。
普通の人よりも汗をかきやすいのは、まったくなんでもありません。普通の人より多く汗をかくとはいえ、病気でもないのです。それは「私とあなたとで声や身長が違います。これは病気です」と言っているのと同じです。
ただの個人差であり、病気ではありません。
治してもらおうと病院に行っても、先生に笑われるのがオチです。もちろん、汗がずっと出続けて止まらない病的な汗かきとなると話は別ですが、暑かったり緊張したりして普通よりたくさん汗をかくのは、正常の範囲です。
汗かきを、病気だと思わないことです。あえていえば、体質です。
人にはそれぞれ個性がありますが、汗かきも自分の体質だと思うことです。
人の体から出る汗には2種類ある:エクリン汗腺とアポクリン汗腺
汗を分泌するところを「汗腺(かんせん)」と言います。
汗腺から出る汗は、見た目には1種類に感じますが、実は一つではありません。
汗腺には、2種類あります。「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」です。それぞれ、汗腺の場所、色、臭いなどに特徴がありますので、見ていきましょう。
エクリン汗腺の特徴
私たちが一般的に呼ぶ「汗」は、エクリン汗腺から出ているものです。汗の色は、透明です。99パーセント以上は水分であるため、ほぼ無臭です。この汗腺は、全身に分布し、およそ200万個から300万個にもおよびます。
特に手のひらと足の裏は、エクリン汗腺がたくさん集中しています。手のひらと足の裏が汗ばみやすいのは、そのためです。
エクリン汗腺の働きが活発な人が「汗かき」の体質になります。
アポクリン汗腺の特徴
アポクリン汗腺は、体の一部にしかありません。脇の下、性器の周辺、へそ、乳輪、肛門周辺、耳の穴などです。色は少し黄色であり、普段はにおいもありません。アポクリン腺から分泌された汗は臭いません。
しかし、アポクリン腺からの汗に雑菌がつくと、分泌物に含まれる脂肪酸の分解が始まり、ひどい臭いを放ち始めます。このにおいがひどい状態のことを「わきが」といいます。
つまり、わきがの体質の人は、生まれながらアポクリン汗腺が多かったり働きが活発であったりする人だといえます。
体臭を抑えるポイント
汗を抑えたいのなら、汗をかく状況の理解が必要です。汗をかく3つの状況を理解することは、汗を抑える方法にもつながります。堅苦しい話とも思えますが、ぜひ押さえておきましょう。
温熱性発汗
まず一つめは、暑さによって出る汗です。
私たちにとって、最もなじみの深い汗ですね。常に体は、36度から37度の平熱をたもとうとします。夏場やスポーツなどで体温が上昇すると、体が危険な状況になるため、汗を流して体温を下げようとします。
汗に塩分が含まれているのは、蒸発したとき、熱を逃がしやすいためです。
温熱性発汗を抑えるためには、暑くなるような状況を避けることです。
それが、体の健康を守る行為にもつながります。
精神性発汗
驚いたり、緊張したり、不安になったりしたときにも、汗が出ます。「冷や汗」も、精神性発汗の一つです。
なぜ、心理的・精神的ストレスがかかったとき、汗が出るのでしょうか。
精神性発汗は、私たちが猿人だった頃からの「滑り止めの名残」といわれています。いきなり敵が現れたとき、道具を持ったり走ったりなど、すぐに敵との対処ができるよう汗をかいて、摩擦をつくろうとしているのです。一瞬で交感神経が優位になると、心拍数が上がり、汗をかき始めます。手のひらと足の裏にかぎってよく汗をかくのは、摩擦をつくる関係です。
精神性発汗を抑えるためには、ストレス解消や悩み事の解決をして、心労を減らすことです。ストレスが小さくなることで、精神性発汗も少なくなります。
味覚性発汗
からいものや濃い味付けの料理を食べたときに感じる強い刺激によって、汗が出ます。香辛料による刺激によって、消化器官の運動が活発になります。
そのぶん熱を発生するため、汗をかくというメカニズムです。
味覚性発汗を避けるには、むやみに刺激物を口にしないことが大切です。
もちろん興味があって、たまに食べるくらいは問題ありませんが、毎日強い刺激のある料理ばかりを食べていると、消化器官に大きな負担をかけてしまいます。胃や腸が炎症を起こす原因にもなるのです。
水を飲む量と汗の量は比例しない
汗を抑えるため、あまり水を飲まないようにしようとする人がいます。そもそも水分を取らなければ、汗が出る量も少なくなるだろうと思っているのです。よく汗かきの人に見られる考え方です。
汗の99.5パーセントは、水です。水と汗の量に関係がありそうな気がしますが、実際はどうなのでしょうか。
残念ながら、汗を抑えるために水を控えても、無意味です。水を飲む量を減らしても、汗の量は変わりません。
汗は、生理的に出るものです。暑ければ暑いほど汗をかきますし、緊張もするほど汗をかきます。生命維持に必要な汗ですから、水の摂取量にかかわらず、出るときには出るのです。
むしろ水を控えるのは、健康によくありません。暑いにもかかわらず、無理をして水を控えていると、脱水症状のリスクが高まります。暑くてたくさん汗をかくのなら、体臭のことは気にせず、積極的な水分補給が大切です。
体臭よりも、健康第一です。重度の脱水症状では、最悪の場合、死にいたることもあります。たくさん水を飲みすぎたとしても、余分な水分は、尿として排出されるだけです。
汗には「よい汗」と「悪い汗」がある。
スポーツをするときにかく汗は、気持ちがいいものです。さほど、におわず、すぐに乾きます。
一方、満員電車の中でかく汗は、じめじめしていて乾きにくく、においやすいものです。
こうした違いを経験したことはありませんか。この違いのことを、俗に「よい汗」と「悪い汗」といいます。
「え? 汗に種類なんてあるの」と驚く人もいるのではないでしょうか。よい汗は、蒸発しやすく、においにくいのが特徴です。悪い汗は、蒸発しにくく、においやすいのが特徴です。
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか。
その違いの鍵を握るのは、汗に含まれる「ミネラル分」です。本来、汗の99.5パーセント以上は水分であり、残りはミネラル分です。体の温度が上がると、体温を低下させるために、汗をかきます。汗をかくとき、水分と一緒にミネラル分も出ますが、ここでおもしろい人間の機能があります。
汗と一緒にミネラル分が排出されても、再吸収されるのです。
ミネラルは、体の調整に必要な貴重な資源であるため、排出しても取り戻そうとします。その結果、水分と塩分だけが残ります。もともと肌は、菌を殺菌するため弱酸性です。汗をかいても再吸収の機能によって、肌には水分と塩分だけが残るため、弱酸性を維持できます。弱酸性の肌をたもつことで、汗をかいても菌が繁殖しにくく、においにくくなるのです。
またミネラル分が少ないため、蒸発がしやすくなります。
一方、悪い汗は、ミネラル分を含みます。悪い汗は、脂っこい食事に偏っていたり、運動不足で汗をかく習慣がなかったりする人が、よくかきます。肉食で脂肪分が多い上、汗をかく習慣がないために、汗腺の機能が弱っていて、いざ汗をかくとなると、ミネラル分が排出されやすいのです。再吸収されればいいのですが、大量のミネラルであるため、再吸収が追いつきません。
汗腺の機能も低下しているため、再吸収の力も弱っています。汗をかいたとき、ミネラル分が残りやすくなります。残ったミネラル分の影響で、肌がアルカリ性に傾き、肌の殺菌力が低下します。殺菌力が低下すれば、菌の繁殖がどんどん進むため、においやすくもなるのです。
これが、よい汗と悪い汗をかくメカニズムです。
現代人は、悪い汗をかきやすくなったと言われます。昔に比べて運動量が減り、食の欧米化に伴って油分を多く含んだ食事を口にする機会が増えたからです。油分を多く含んだ食事はできるだけ控えつつ、日頃から定期的に運動をして汗をかく機会をつくることで、よい汗をかけるようにしましょう。]]>
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